『うばたま』 2009-2011


光の不在としての暗闇を見るということは、見えないことと同義だ。それは光の記録である写真の場合、フィルムに光が記録されないことによって暗闇を表現することができる、という言葉に置き換えられる。

人口照明の発明は近代の成立に欠かせない条件であろう。夜も稼働する工場が暗闇に輝くのを初めて見た人たちは、さぞ驚いたに違いない。昼と夜がそれぞれ独立した世界だったものが、その発明によって、夜を昼の延長として扱うことができるようになった。それ以降、人間の暗闇に対する捉え方はどれほど変わっただろうか。現在の我々が暗闇という言葉を扱うとき、それはもはや比喩的に使われる概念でしかないように思われた。そこで、目の前に存在する暗闇を前近代的な暗闇と見做し、それを経験してみることにした。

「うばたま」は短歌において、暗闇を導き出す枕詞として使われる。